芝生に腰を下ろし、ランチボックスを広げる。
朝、作ったハムときゅうりのサンドウィッチ、イチゴジャムのサンドウィッチ、小ぶりのリンゴ(Cox)をみんなでいただいた。
水筒に淹れた紅茶もおいしい。
イギリスに初めて訪れたときは、美術館やロンドンブリッジ、ピカデリーサーカスの雰囲気など見るものすべてに圧倒され、心おどる観光だった。
次に訪れたとき、カントリーサイドに行き、ウォーキングを初めて知り、体験した。
学生だったこともあり、歩く楽しみは、遠足のようだと思った。
みんなで歩きながらリラックスして、おしゃべりし、普段と違うことでお互いに新しい発見があったりする。
個人旅行に歩く時間を作るようになったのは、それから何年も経ってからだと思う。
イギリスに行くと必ず会う友人に毎回、毎回、ウォーキングに誘われた。
そのことは、今、振り返れば本当にありがたいことだったと感謝している。
本当にちょっとした場所、買い物に行った先で良い景色を見つけたら歩いてみるとか、ティールームでお茶の後、駐車場に行くまでのあいだに寄り道をして1時間くらい歩くなんてことも。
ウォーキングしましょう!となると半日、もしくは一日。靴もトレッキング用のしかっりしたものに履き替えて歩く。
一緒に旅へ行くと、必ず朝食前にB&Bのまわりを1時間以上は歩いていた。
ウォーキングも徐々に私の中で変わっていき、楽しみはひとつではなく、たくさんあり、馴染んできたのかなと感じている。
最近、友人がひざを悪くしてしまったため、遠くへ歩くことはできなくなった。
けれど、ゆっくりとした歩みで、ウォーキングをする気持ちは変わっていなかった。
そのことがとても嬉しかった。

英国ナショナルトラストのウォーキング・ホリデー
英国ナショナルトラストの環境保全ボランティア・ワーキングホリデーについては既にこのブログでも何度か紹介していますが、今回は“ウォーキング・ホリデー”。
英国ナショナルトラストのワーキングホリデーには、対象年齢「38歳以上」の「オークホリデー」というプログラムがあります。
当時私は20代でしたが、一緒に参加する英国人の友人が38歳以上だったので、特別に参加させてもらいました。
友人によると「今回のオークホリデーは、ワーキングホリデーというよりも“ウォーキング”ホリデーになるかもしれない」とのこと。
そのとおり、通常のボランティアワークの合間に、カントリーサイドのウォーキングを楽しむ時間が多くとられていました。
対象が38歳以上、ということで、全体的に参加者の年齢層は高め。
「ボランティアというよりも、友達づくりや、健康増進のために参加した」という声も聞かれました。
友人によると、イギリスの食事は高脂質・高カロリーなので、中高年になると太りすぎて健康上の問題を抱える人が多く、余暇を使って積極的に体を動かす必要があるのだそう。
確かに、15人の参加者の多くが体格がよく、誰かが床を踏み鳴らすと、キャンプがぐらぐらとゆれるのでした。
翌日からボランティア作業&ウォーキング開始。
日本人だと、ここで皆真面目に歩きそうなものですが、さすが英国人(?)参加のスタイルも人それぞれ。
アランさんは、とてもゆっくり歩き、切り株を見つけると必ず座っておしゃべりを始めます。(その都度、皆立ち止まって、彼のペースに合わせます。)
バーバラさん達女性陣は、ウォーキングの途中も、美味しそうなティールームを探すのに熱心。
ランチ、ティー、としょっちゅう休んでは、口に何かを入れています。
プログラムには、BTCV(自然保護団体)のガイドによる長距離ウォーキング6.5マイル(約10.4㎞)も組まれていました。
英国北部ノーサンバーランドの、スコットランドとイングランドの境目は「ボーダー」と呼ばれ、ウォーキングにもトレッキングにも良いところです。
林の中のトレイルを通り、小高い丘に登ると、岩でできたその頂上には、ピンク色のヒースの花が広がっていました。
BTCVのスタッフによると、林は主に松の木から成り、数少なくなった赤りすの貴重な生息環境なのだそうです。
シダの茂みをかき分け、牧場を抜け、あちこちにウサギの穴を見つけながら、さらに歩きました。
風が強く、小雨交じりのノーサンバーランドは、決して良い天気とはいえませんでしたが、歩いた後は清々しく、まだいくらでも歩けるような気がしました。
さて、キャンプに戻ると、食堂には巨大なタンク入りのワインが運び込まれ、既に宴会が始まっていました。
朝食の時「私はシュガーレス・ミューズリー(シリアルの一種)しか食べられない」と言い、何種もの薬を飲んでいたドッドさんは、いかにもカロリーの高そうなパイをおいしそうにほおばっています。
宴会の中心は、長距離ウォークではなく、短距離を選んだ人たち。(きっと、少しだけ歩いてキャンプに戻り、宴会の準備をしていたのでしょう。)
きっとこの人たちは、消費カロリーとの差なんて考えていないのだろうな。
当時の私は、初めての英国長期滞在中。
イギリス料理を食べ続けたら20年後にどうなるかを目の当たりにして、以降、重たい食事が続いたら昼食はサンドイッチやスープにしたり、デザートをパスするようになったのでした。
そんな私も「38歳以上」の年齢に達し、ふと、あの時出会った人たちはどうしているだろうか、と思い出します。
私が考えるヘルシー志向とはずいぶん違ったけれど、きっと、友人とおしゃべりを楽しみながら食べたいものを食べ、ちょっと体を動かし、カントリーサイドのいい空気の中で大声で笑い、今も元気一杯に休日を楽しんでいるのではないかと思うのです。

コッツウォルズ、バイブリーとボートン・オン・ザ・ウォーターでウォーキングを楽しむ
サイレンセスター(Cirencester)という街からバスで10分の所にバイブリー(Bibury)という小さな村がある。バスを降りるとまず赤く色付いたアイビーに覆われたスワン・ホテルが目に飛び込んでくる。
澄んだ水が流れる川では水鳥たちが泳ぎ、その小川沿いに石でできた古い建物が立ち並び絵本の中から飛び出してきたようなかわいらしい風景を作っている。
ここで時間に余裕のある人や歩くことの好きな人におすすめなのは地図を持ってウォーキングに出かけること。
イギリスではパブリック・フットパス(Public Footpath)という誰でもウォーキングが楽しめる小道が整備されていて、羊のいる牧草地や人の家の庭先など自由に歩くことができる。
インフォメーションで買ったBibury版ポケットサイズ(£1.25)の地図を持って、いざ出発。地図を見るのが苦手な人でも大体人の歩いた形跡が残っているのでそこを外れなければ大丈夫。
村から一歩外に出てみると、そこにはなだらかな丘の連なる雄大な景色が広がっていた。
羊たちが草を食べているそばを、牛たちがのんびり横になっている畑の中を、たくさん実っている自然のブラックベリーをたまにいただきながら“歩くこと”を充分に満喫した。
気持ちに余裕があるから“歩くこと”が楽しいのか、 “歩くこと”が気持ちに余裕を与えてくれるのか、どちらが正しいのか分からないけど、イギリスで歩くことの楽しさを発見したのであった。
ボートン・オン・ザ・ウォーターという街は小川が街の中を流れ、その川に小さな石橋がたくさん架けられている街である。
海外の観光客だけでなく、イギリス国民にも人気のある街らしく、平日にもかかわらずたくさんの人で賑わっていた。
バス停の近くのレストランには「日本語のメニューが中にあります」と日本語で書かれた張り紙があり、シーズンにはたくさんの日本人がここを訪れるのだろうなと思った。
時間と体力に余裕があれば、この街からアッパー・スラウター(Upper Slaughter)とロー・スラウター(Lower Slaughter)の村まで足を伸ばすのがおすすめである。
どちらの村も小さな教会があり、こじんまりとしたとても静かな村である。
村の中を小川が流れ、川沿いに蜂蜜色をしたコッツウォルズ特有の石でできた建物が並び、あちこちに花が飾られている。
ここに住んでいる村人の気持ちの豊かさが感じられる。
コッツウォルズの村々はそれぞれ小さく、1周するのに1時間もかからない所もある。
だから車があれば1日にいくつかの村を見てまわることができる。なるべく多くの村を見たいときは車を利用するほうがよい。
一方、1つの村に1日かけて滞在してみたり、地図を片手に村から村へ歩いて移動してみたりすると思いもかけない景色に出会えたり、そこで生活している人とちょっとした会話ができたりする。
いつもとは違う時間の流れをイギリスのカントリーサイドで味わってみるのもいいかもしれない。(writer M.Z)



レイコック(Lacock) ~修道院のある小さな村で~
9月下旬のある晴れた日の午後、イギリスのレイコック(Lacock)という小さな村でバスを降りた。
レイコックは、バース(Bath)の少し東に位置する30分もあれば歩いて村を1周できるくらいの小さな村。
中世の建物がそのまま残っており、今でも村人がその何百年も時を経た建物の中で暮している。
ここでの思い出は、村で一番古い家 “キング・ジョンズ・ハンティング・ロッジ(King John’s Hunting Lodge)” でのティータイム。
前かごに小さな白い花が添えられた古い自転車のある入り口を抜けると、ティールームとガーデンが見える。
天気のよい今日は迷わず庭のテーブルの方へ。
ピンクのドレスを着た背の高いお姉さんが笑顔で迎えてくれた。注文したのは紅茶とスコーンのセット。
しばらくすると黄色と水色の毛糸で編まれたティーコージーにくるまれたポットとカゴに盛られてきた焼きたてのスコーン、そしてあまるほどのクロテッド・クリームとホームメイドのジャム。
秋晴れの高い空の下で、クロテッド・クリームとジャムをたっぷりつけた田舎ならではの素朴なスコーンを口に入れると、何とも言えない豊かな気分も一緒に味わえた。
小鳥のさえずりが聞こえるガーデンで、ゆっくりとした午後のひとときを楽しみました。
(writer M.Z)


ストーヘッド(Stourhead) ~絵のような風景~
電車が1時間に2本あるかないかの小さな駅から車で20分くらい走った所にイギリスの風景式庭園として有名なストアーヘッドがある。
そこはさすがにイギリスを代表するだけあって、どこを切り取っても絵画のように美しい。
中心に広い湖がありその周囲には景色を見ながら散歩できる小道が整備され、所々にその散策を楽しくさせるような建物や彫刻が配置してある。
訪れた日が日曜日だったので多くの家族連れやカップルが秋の日の散策を楽しんでいた。
そこにはStourhead Houseという18世紀に建てられた屋敷もあり、その中は美術館のように絵画がたくさん飾られている。
どの部屋も豪華でイギリスの上流階級の生活を少し垣間見ることができる。
Houseの入り口で受付けの親切そうなあばさんが「あなたは日本人ね、日本語で書かれた解説書を貸してあげるわ。きっと役に立ちますよ」とプラスティックでコーティングされた解説書を手渡してくれた。
こんな所で日本語に出会えるとは・・・。
おばさんの言うとおりその解説書は建物を理解するのにとても役に立った。
屋敷の中で豪華なインテリアや美術品を鑑賞し、その屋敷の主人になった気分で庭園を散策すると歩き方まで変わってしまうような気がした。
ここを訪れる際に公共の交通機関を利用する場合、休日だとバスが運行しないので注意が必要です。(writer M.Z)



ノーフォークの樹齢500年オークの中へ
旅先で次はどこに行くのかと聞かれ、「ノーフォーク」と答えると
みんなから「良いところだ」と返ってきた。
フラットな地形に、麦畑と赤いワイルド・ポピーが広がる、ノーフォーク地方。
「Never Let Me Go 私を離さないで」(カズオ・イシグロ著)にも登場する場所である。
ノーフォークの海岸線に向かう道は農道が多く、狭い道の小さな標識を注意深く見ていないとすぐに迷子になってしまう。
標識を見つけるたびに止まって、地図を確認しつつ、海辺のストロベリーファームでランチを食べ、陶芸家の工房へ向かった。
工房でいろいろ陶器を見たあと陶芸家の方とすこし話し、このあたりのおすすめの場所も教えてもらった。
さあ、ウォーキング。
ゴールドに色づいている小麦畑を通り、林道に入っていくと、足元のシダが木々の間から差し込む光に照らされ淡い黄緑色と明るい。
30分くらい歩くと、大きな池に着いた。
池の対岸に広々とした牧場が見え、その先に立派なレンガ作りの建物が見える。
木製ベンチに腰をかけてひと休みしていると、頭の上からヒナの鳴き声が聞こえてきた。
見上げると、木の幹に小さな穴があいており、そこから聞こえてきているような感じ。
2,3羽いるらしく鳴き声が重なり合っている。
どうやらキツツキの巣のよう。
ヒナがいそうな木は、見当が付いたけれど姿は見えず、静かに、気配を感じられないようにじっとしていた。
5分ごとに鳴き声がしているので見たい気持ちが高ぶるが、結局、ヒナの様子は声の強弱で想像するだけとなった。
少し離れて双眼鏡をのぞくと、ちょうど親鳥がやってきて近くの木にとまった。
きっと巣の中のヒナに食べ物を運んできたのだろう。
おどかさないように、そっと離れた。
牛が大きな体を横にして昼寝をしているそばを通り、建物の方へ歩く。
牛たちは、人の気配に気づくと15頭がみんな、横になったまま顔だけこちらをのぞき込んだ。
緑の丘を越え、林を抜けると、大きなオークの木に出会った。
”きっと樹齢500年は超えているわね”とカレン。
あたりを見渡すと、こんなオークが周辺にいくつもあった。
ひときわ太い幹のオークをぐるっとひとまわりしてみると、根っこと地面の間にすきまがあった。
ウサギやキツネなら入れそうだけれど、人間はどうかしら?
不思議の国のアリスが滑り落ちたような人が一人やっと入れるくらいかな。
暗い、真っ暗闇に頭を突っ込み、どうなっているのか見えない。
腹ばいになって入り、後ずさりして戻れるのか不安を感じつつ、入口の方を振り返って見ることはできず、頭を木の根にぶつけながら肘を地面に押し付けた。
下に落ちている様子はなく、横に進んでいると思っているが、平衡感覚は正しく機能しているかは疑問だった。
下に落ちているように思えば、そう思える。
肘と膝で地面を蹴って進むが、乾いた土が砂埃となって舞うので強く進むこともできず、目をこすり暗い方へ向かった。
根の中は、静かで暑いくらいだった。
森の中で感じる静けさではなく、音が閉ざされ、耳をふさがれたような感覚。
体を伸ばしたくなるが、どうしようもなく暗い。
ところどころ肘に硬い根を感じ、根が四方八方に伸びている間を通っているのかと思う。
木は土より温かいものなのだと体感した。
幹の中は大きなうろになっていて、青々と葉を茂らせているのが信じられないくらい、中はすっかり朽ちて、からっぽになっていた。
頭のはるか上に、ぽっかりと青い空が見えた。
外の世界と隔てられたような、不思議な空間。
樹齢500年のオークの幹の中で、ちょっとしたアドベンチャー気分を味わった。
午後の陽射しはまだ十分にあり、木々の緑がまぶしく輝いている。
ウォーキングのスタート地点まで戻ってきた時、どこまでも広がる牧草地を眺めながら、”パーフェクト アフタヌーン”とカレンがつぶやいた。
心地良い風に吹かれて、あの巨木のオークの中にいたことを、物語のように思い出していた。
オーク(English Oak)は、イギリス人に最も親しまれている木で、自然保護団体・英国ナショナルトラスト(The National Trust)のシンボルマークになっている。
オークは、野生動物の大切なすみかであり、木のうろは、さまざまな鳥たちの巣にもなる。
秋に実るどんぐりは、カケスやねずみ、リス、バッジャー、シカなど多くの生き物の貴重な食べ物となる。
植物、昆虫、野鳥、動物たちの大きな生態系の中心にいる大きなオークに安心したウォーキングでもあった。


コッツウォルズのケルムズコット散策
コッツウォルズの村、ケルムズコット(Kelmscott)
小さな村で教会、パブが1つ、まわりは牧草地である。
村ですれ違う人たちは村人なのか都市から遊びに来ているのか判別しづらい。
コッツウォルズは英国の国内でも人気の観光地なのでロンドンあたりから来ている人たちもたくさんいるからだ。
B&Bに泊まっていた夫婦もマンチェスターからウォーキングを楽しみに来ていた。
朝食で一緒になり、“昨日は1日6時間も歩いた”と。
今日もこれからテムズ川沿いを歩くそうだ。
近くのおすすめのガーデンや公園のこと、以前、日本人の女学生がホームスティに来たことを話してくれた。
B&Bのオーナーにお弁当をお願いしていたようでそのヨーグルトをどれにするかかなり長い間選ぶのに悩んでいた。
特に原材料にこだわっているようでオーガニックとか産地を気にしていた。
食べ物に詳しいその夫妻は、B&Bの朝食に出されたソーセージとベーコンについてオーナーと話していて、ソーセージの原料について事細かに聞いていた。
ケルムズコットあたりで作られたもので、地元の食材を使うようにしていると言っていた。
ソーセージは、肉質がとてもしっかりとしていて、朝にはすこしボリュームがあるのでお昼のサンドウィッチにちょうどいいと思った。
朝食前に村を出てカントリーサイドの風景の中を散策した。
100mも歩くとすぐに牛が見えてきた。
朝露で湿った草、犬の散歩をしているたくさんの人とあいさつし、芝のにおいにリラックスするウォーキング。
今日は、朝から陶芸家のところへ行くので緊張気味だけれど楽しみである。



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