英国のカントリーサイドめぐり
エディンバラ城 Edinburgh
ぶ厚い石畳の坂道を上ってエディンバラ城の門に着きました。
旅行者がたくさんいます。
たぶんイタリア人であろうカップルに写真を撮ってほしいと頼まれました。
iPhoneで記念写真を撮影しました。
シャッターを押す合図をどうしようか。
“ハイ、チーズ”、もしくは、“スマイル!”かなと一瞬、考えて
“1、2”と大声で言いました。
幸せそうな2人は、私の声は聞いていなかったようでiPhoneを渡しに近寄ると写真撮影が終わったことに気づいた様子でした。
そのあと、「エディンバラで一番狭いパブだ」と張り紙していたパブに入りました。
小さなドアを押して入ると、低い天井におじさんらがカウンターで寄り添っておしゃべりをしていた。
しばし、その場をうろうろしました。
5分くらいたってパブのおばさんの手が止まり、ビールをハーフ・パイント注文しました。
ここで初めて地ビールをダークと言っているのを聞き、黒い色の地ビールは愛称をダークと言うのだと知りました。
独特な香りにビターな味わいが忘れられないほろ酔いとなりました。
エディンバラの濃紺の石の壁は、思ったほど暗くはない。
道の両側に壁の高い家々が並んでいる。
壁に沿ってエディンバラ城に向かって歩くが、高台にある城がなかなか姿を現さない。
黒い壁がどこまでも続いている。
城はどこにあるのかと見上げるが、高い壁に遮られて見ることができない。
スコッチ・ミスト(Scotch Mist)と呼ばれるしとしと雨が降っている。出かける前に窓から外を見たら、傘を差さずに歩いている人たちがいたので傘を持ってこなかった。
ジャンバーに付いていたフードを被っているが、水が滲みてきている。11月の雨は身が凍えるほど冷たい雨だった。
雨宿りができそうな場所を探すが、周りは壁で適当な所が見つからず歩き続けた。黒く厚い雲が垂れ下がり、だんだん暗くなってきている。フードで前が見えず、足元を目で追いかけながら歩いた。
坂道に差し掛かると赤や黄色のペンキで塗られた壁のお店が連ねている。町の中心にやっと辿り着いたと安心した。しかし、お店はすべてシャッターを下ろしていて、通りは静かで人影もなかった。
早く、早くと思いつつ城を目指して黙々と坂を上る。
もう一度、城はどこにあるのかと見上げた。やっぱり見上げた先は、壁だった。
だけど、その壁は今までのとは違い、石がむき出しになっている。さらに、これまで見てきた壁の2倍から3倍の高さだった。それでも、よく見ると壁の上に深緑色が見えた。
森のようにも見える。この坂を登れば、城に着くかも。必死になって駆け上がった。坂の傾斜がきつく感じ、足取りが重くなってくる。
本当にこの上に城があるのか半信半疑に思えてきた。高く積まれた石の壁がまだ続いている。
その時、雨雲の間から青空がくっきりと見えた。
誰かの笑い声で、私は目を覚ました。夢だったのだ。
もうすぐエディンバラ駅に着くとの車内アナウンスが流れた。すでに夜の10時をまわっており、町は真っ暗だった。
スコットランドに着いて、最初にエディンバラ城に行った。入口に青地にくっきり白のななめの十字が入ったスコットランドの国旗が掲げられている。
独自の文化と歴史を持つ北の都、エディンバラ。
雲の間から光が差し込む。
城からの眺めに微笑んだ。
歴史を感じさせる街並みの深く濃い黒、空の青、雲の白が目に映った。