英国のカントリーサイドめぐり
ウォーキング大好きなおじさん ストウ・オン・ザ・ウォールド Stow-on-the-Wold

ストウ・オン・ザ・ウォールドのユースに3日間泊まった。
立地は村の中心の広場にありとてもいい条件で、内装もリフォームしたばかりできれいだった。
夜の9時ごろ着き、パブの料理も終わっていたので(パブの料理は8時くらいで終わり、その後は飲み物だけになる所が多い)、共同キッチンで夕食を作ることにした。
共同キッチンではガスコンロや鍋などを他の宿泊客と共有するため、時間帯によって混んでいる事もあり、そんな時はお互いに譲り合って使う。
「何を作っているの」とか、 「今日はどこに行ってきたの」など
雑談をしながら料理をすることは、ユースではよくあることだった。
夜が遅かったこともあり、共同キッチンには誰もいなかった。広いキッチンを気兼ねなく使えると思い、のんびりと作り始めた。
10分くらいたった頃、一人のおじさんが料理を作りに入ってきた。
いろいろと話しかけてくるおじさんに最初は少し戸惑った。 おじさんは、ここのユースに今日から1週間泊まる予定で、ウォーキングを楽しみに来たそうだ。
今日は、最寄りの駅からここまでの6.4kmを歩いて来たそうで、途中、道に迷ってしまい、今さっき着いたのだといった。
昼過ぎに最寄り駅を出たらしいので、9時間近く歩き続けたことになる。
おじさんとは部屋が一緒だった。そのため、食事の後も話しは続いた。
明日から毎日、ウォーキングに出かけるのだそうだ。
翌日の夕食もおじさんと一緒になった。
ウォーキングのことを聞いてみると、なんだか落ち込んだ感じだった。
ウォーキングに出かけた先で唯一のジャンパーを失くしたそうだ。ウォーキングをしたというより、ジャンパー探しの一日だったそうだ。
食後、部屋でおじさんはカメラを見せてくれた。50年くらい前のカメラで、初めて見るカメラだった。手に取ってみると、とても重かった。
おじさんは、ウォーキングに行く時はこのカメラを持ち歩き、風景写真を撮っているのだそうだ。
風景写真は、曇り空の日が最もいい写真が撮れる。太陽の光が強い晴れの日より、曇り空のやわらかい光の中の方が、風景はきれいに撮ることができる。だから曇りの日が多いイギリスの天気は、風景写真を撮るには最高なのだと教えてくれた。
しかし、そのカメラに使われている電池が特別のものであるため、手に入れることが難しく、今は電池切れで撮影することができないのだそうだ。
3日目の夕食の時、おじさんは新しく買った紺色のジャンパーを見せてくれた。ウォーキングのついでに立ち寄った店で買ったのだった。とても気に入っているらしく、そのジャンパーを選ぶのにかなりの時間がかかったそうだ。
おじさんは、夕食にサーモンを焼いていた。サーモンはフタをしたステンレス製の鍋で焼かれていた。
焼き上がりの具合を見ようとおじさんがフタを開けた瞬間、サーモンが「パンパン」と音をたてながら鍋から飛び出してきた。
おじさんは、思わず 「bloody salmon」 と叫び、サケを追いかけていた。
おじさんは、毎年一週間、ストウ・オン・ザ・ウォールドにウォーキングを楽しみに来るのだそうだ。