英国のカントリーサイドめぐり
ラウンドアバウト:信号のないロータリー状の交差点のこと。アストン Aston
初めての場所に行く時は、どんな街並みだろうか、おいしいものはあるだろうかなど、いろんなことを考えながらワクワクして行く。
陶芸家の工房には、レンタカーで行っていた。初めて行く街や村がほとんどで、迷うことなくたどり着くことはめったにない。1-2回同じ道を行ったり来たりするならまだしも、5-6回も同じ看板を見ると、つくづく方向音痴の自分が嫌になる。
その日は、オックスフォードから北にA40で20分ほどの所にあるウィットニーを抜け、A4095に出てノース・リースという村に行く予定だった。
オックスフォードの朝の渋滞を避けるため少し遅く出発したので、オックスフォード市街を出るまでは順調だった。
この辺りは、山もなく平坦で真っ直ぐな道が続き、道の両側に広がる牧草地を眺めながらの運転。レンタカーのフィアット車は独特のエンジン音を響かせ、BBC2のラジオ番組からはイギリスの流行曲が流れていた。
ウィットニーに行くまではよかった。町の中心にある13世紀に建てられた教会が迎えてくれた。町を抜け、目的地であるノース・リースを目指し牧場と牧場の間を突っ切って行った。30分くらいで着くはずがなかなかノース・リースの村が見えてこない。
地図で確認し、もう一度ウィットニーに戻ってやり直すことにした。なんと、これを4度も繰り返した。ウィットニーを抜ける時に必ず通る6差路のおかげである。
この6差路には、3つの連続した小さいラウンドアバウト(※1)があった。ラウンドアバウトに入る時には、どこで曲がるか決めていないと後ろから前から横から車の渦に巻き込まれてしまう。看板を見る余裕などなく、早くラウンドアバウトを抜け出すことだけに集中していた。
※1:ラウンドアバウトとは、信号のないロータリー上の交差点のこと。
右方車優先を原則とする。
ハンドルを右へ左へバタバタと回しラウンドアバウトをやっとの思いで抜けるが、少し行った所で看板を見て肩を落とす。この道でなかったことに気付いてユーターンを余儀なくされる。ラウンドアバウトが空いていないかと期待するもその思いは届かず、ラウンドアバウトの前に立ち止まるたびに車の量が増えているようにも思えた。
集中力が切れ、休憩することにした。。結局、6つある中の最後の一つのラウンドアバウトの入口を残してウィットニーに戻った。
スーパーマーケットのセインズベリーでオレンジジュースとハム&チーズのサンドウィッチを買って、近くの公園でランチとした。ランチの後、町を少し歩き、どんな場所か知るためにツーリスト・インフォメーションにも立ち寄った。町を手っ取り早く知るには、ツーリスト・インフォメーションは本当にありがたい。イギリス国内のほとんどの町や村にあり、係りの人もとても親切に教えてくれる。
何かあるかと思いながら、パンフレットの棚を眺めているとその中に“pottery(陶器)”の文字。
“Aston Pottery(アストン・ポッタリー)”。
地図を見ると、あの6差路のラウンドアバウトを抜けた先にあるお店だった。地図をもう一度確かめ、別のルートがないか探したが、かなりの遠回りになる。違う道に行って迷ってもつまらないことだと思った。
ノースリースに行った後でアストン・ポッタリーへ行くこととした。
このことをパブで友人に話したところ、友人は、ラウンドアバウトで間違った入口に入り、それに気付いたのが2時間ほど走った後だったそうだ。看板はところどころに出ていたのだが、地名を覚えていなかったため間違っていることに気付くのが遅くなったそうだ。
走り始めは見慣れない景色であってもそれほど気に留めることもなかったが、そろそろ見慣れた景色になってもいい頃だろうと思われるほど走ったにもかかわらず一向に目的地に近づいている気がしないので、地図を確認することにした。
友人は、現在地を確認しようと目の前の看板に書かれている地名を地図で探したが見当たらず、その時初めて自分が迷子になっていることに気付いた。自分が今どこにいるのか確かめるため、とにかく現在地を地図で探した。
友人は、現在地を見つけて驚いたそうだ。まったく逆の方向に行っていたのだ。友人の不幸はさらに続く、急いでユーターンして来た道を戻っていたのだが、迷子になったことに動揺していたのかスピードの出しすぎで、事故を起こしそうになった。さらに、事故すれすれの運転でさらに心臓の鼓動が激しくなっていた。一瞬、まぶしい光が友人の目を刺した。スピードカメラのフラッシュ光だった。
初めての場所に訪れる時、ガイドブックを見ながら、ここに行ってみたい、あれも見たい、地元の料理はおいしいかなとワクワクしながら行く。
ただし、道に迷わなかったらのことである。
ウィットニーについて
ウィットニーは、コッツウォルズの入口にあたる町です。
1669年以来、毛布作りで有名となった町です。毛布は、原料にコッツウォルズの羊毛と地元の綿毛を使って作っており、世界的にも高品質なものとして知られています。エリザベス女王もここで作られた毛布を使用しているそうです。